『吉田口登山道』で富士山を“0合目”から登ったら12時間かかった
富士山の主要4ルートのひとつ『吉田ルート』。新宿からバス1本で登山口まで行けることもあり、非常に人気のルートとなっています。一般的には『富士スバルライン五合目』から登山を開始するこのルートですが、今回はもっと標高の低い“0合目”がある『吉田口登山道』から登りました。
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登山データ
ルート | 富士山吉田口登山道 ~ 吉田ルート山頂 ~ 富士スバルライン五合目 |
登山時期 | 2017年7月上旬 |
かかった時間 | 登り:12時間3分下り:2時間55分(富士スバルライン五合目へ) |
最低標高地点 | 北口本宮冨士浅間神社(標高850m) |
最高標高地点 | 吉田ルート山頂(標高3,715m) |
標高差 | 約2,865m |
総歩行距離 | 約24.4km |
※標高、歩行距離は目安とお考え下さい
コースタイム
- 7:24 “0合目” 北口本宮冨士浅間神社(850m)
- 10:04 一合目 鈴原天照大神社(1,520m)
- 10:43 二合目 冨士御室浅間神社(1,700m)
- 11:07 三合目 見晴茶屋(1,840m)
- 11:35 四合目 大黒小屋(2,010m)
- 12:46 五合目 佐藤小屋(2,230m)
- 13:28 六合目 安全指導センター(2,390m)
- 14:41 七合目 花小屋(2,700m)
- 15:56 東洋館到着(3,000m)
- 4:36 東洋館出発
- 5:01 八合目 太子館(3,100m)
- 6:24 本八合目 富士山ホテル(3,400m)
- 6:57 八合五勺 御来光館(3,450m)
- 7:30 九合目 迎久須志神社(3,600m)
- 8:07 吉田ルート山頂(3,715m)
- 8:50 下山開始
- 9:39 下山道八合目 下江戸屋分岐(3,350m)
- 10:45 下山道七合目 公衆トイレ(2,640m)
- 11:17 六合目 登山道と合流(2,390m)
- 11:31 泉ヶ滝(2,275m)
- 11:45 富士スバルライン五合目(2,305m)
忙しい人のための『30分で登る富士山』
ダイジェストにしましたので、時間の無い人はこちらをご覧になって、登った気になって下さい。
詳細レポート
富士山の主要4ルートのうち、半数以上の登山者が利用する吉田ルートですが、吉田口登山道から登り始める人はほとんどいません。しかし、“御師のまち”から始まるこの登山道は、歴史に裏打ちされた由緒ある道なのです。
興味のある方は、ぜひ昔の人と同じように、今も現存する御師の家に泊まってから登山を始めてみてください。
“0合目” 北口本宮冨士浅間神社(850m)
“0合目”はここだよ、という明確な定義は無いようなのです。山頂のことを“十合目”と呼んでいるのをあまり聞かないですしね。ですが、一合目よりももっと下に登山口が位置しているいう点から、登山を開始するこちらの北口本宮冨士浅間神社を、便宜上0合目とさせていただきたいと思います。
鳥居をくぐると、再び鳥居が見えてきます。
登山道の始まりを知らせる木札。富士山が世界遺産であることを知らない人はほぼいないと思いますが、吉田口登山道がその構成資産であることは意外と知られていません。
お山開きはこの場所で行われているようです。
富士山に33回登ったことを記念して作った碑。
ほどなく車道に誘導されます。
登山道という割には舗装路です。
山頂までの地図。0合目から登るということは、体力もさることながら時間も必要です。
ちなみに登山道と並行するように、遊歩道が設けられています。『馬返』で登山道と合流します。
登山道は県道に合流。
勾配を感じながら歩道を進みます。
7月末に行われる登山競争に向けて、ランナーが練習中。
『中ノ茶屋』まで4kmは、特に見どころがありません。
『中ノ茶屋』通過。
環境省・山梨県によるY〇〇〇という表記の看板が初めて登場。このあとずっと出てきます。
山頂まで14.5kmとのこと。仮設トイレあり。
食事の提供やお土産の販売を行っている中ノ茶屋。北口本宮冨士浅間神社から馬返しまでの中間地点です。9:00の営業開始にはちょっと早かった。
え~、出んの~。
馬頭観世音。馬の往来もかつてはよく見られたのでしょう。
大石茶屋。レンゲツツジの一大群落地らしいです。なお、御殿場口の山小屋にも『大石茶屋』がありますが、それとは別物。
馬返に到着、一合目はもうすぐ。かつての富士登山では人と物資の運搬には馬を利用したそうですが、馬がここで引き返したことからこの名が付いたそうな。
ちょうど乗客待ちしていた『馬返バス』。富士山駅と往復するようです。車はこれより先には進めません。現代ではさしずめ『車返』ということになるでしょう。
仮設トイレがあります。ここで済ませておくのがいいでしょう。
アスファルトではなくなりますが、歩きやすい道です。
現在地表示が昔風で良い。
おやすみ処と銘打たれた小屋の前を通った時、「お兄さん、休んでいきませんか?」と声を掛けられました。
どうやら、地元の有志の方が交代でおもてなしをされているようです。お茶とお菓子をいただいたので、少しの休息をすることに。お茶を水筒に注いでいくようにも勧められました。
こちらのお父さんは昔、吉田ルートの山小屋『富士山ホテル』で働いていたことがあるそうで、その時の写真も見せてくれました。
少し進むと、鳥居が現れます。眷属は猿ですかね。奥には禊所があります。
ここから先が聖域とされていたらしく、修行者はお祓いを受けて身を清めてから山頂を目指したのだとか。
石ころ障害クリア。三角屋根の小屋が見えてきました。
一合目 鈴原天照大神社(1,520m)
『鈴原天照大神社』と書かれた看板が立てかけられています。ここが一合目のようですが、人の気配が全くしないので通過します。
一合五勺 レッキス。レッキスとはかつてここで販売されていた飲料水のことで、それがそのまま小屋名に。小屋は現存していません。
二合目 冨士御室浅間神社(1,700m)
二合目には冨士御室浅間神社の奥宮が鎮座しています。ふもとの里宮の本殿は立派なものですが、ご覧のようにこちらは倒壊が進んでいるようです。なお、大半が富士吉田市の区域を通る吉田口登山道ですが、里宮との関係から、この奥宮の周囲だけは富士河口湖町の管轄です。富士河口湖町の飛び地状態。
横道(細尾野林道)が見えてきました。
仮設トイレがあります。
三合目 見晴茶屋(1,840m)
三合目では、倒壊した小屋が無残な時の流れをさらしていました。
この小屋は見晴茶屋でしょうか。
それとも三軒茶屋でしょうか。
見晴らしがいいので、多くの登山者がここで休憩をしたのだとか。
四合目 大黒小屋(2,010m)
標高2,000mを越えました。出発から4時間歩いて、1,000mも上の位置に来たわけです。
こちらも小屋の跡が残るだけです。
木札が納められて、祠のようになっている場所がありました。
御座石というチェックポイントがありました。女人禁制であったことで有名な富士山ですが、かつてはここまで女性が登れたこともあったとのこと。
建物には『五合目焼印所』の看板が。つっかえ棒で支えられていますが、そう遠くない時期に倒壊に至るかもしれません。
着実に登ってますが、傾斜がきついと感じることはありません。ちょいちょい登山者を見かけますし、軽装でも行動できるところが隠れた人気となっているのかもしれません。
富士山では、俗界と神仏の世界を分ける区分として『草山・木山・焼山』という言葉が用いられていたそうです。草山と木山の境目が馬返で、木山と焼山の境目が、ここ『中宮』なのだそうです。
早川館、たばこ屋、不動小屋など、山小屋跡を次々と通過していきます。
歴史を分断するかのように、車道が現れました。
案内板に従い、不本意ながら車道を歩くことに。
登山道→車道→登山道<今ここ>→車道
ここまで“五合目”表記が散見されましたが、ここが正式な五合目のようです。
炭の焼ける匂いと、楽しそうな話し声。見上げると佐藤小屋がありました。
五合目 佐藤小屋(2,230m)
佐藤小屋に到着。中ノ茶屋以来の営業中の“生きている”小屋。ここからはトイレが有料になります。
お茶のペットボトル(400円)を購入。登山者の金剛杖に焼印を押していました。
金剛杖は登山の邪魔になるんじゃないかと思っている僕ですが、焼印を集めるという作業は少しうらやましい。ここには吉田口の山小屋の焼印が大集合しています。
と言っても、ここで各山小屋の焼印を押しているわけではなく、ブルドーザーの鍵を『焼印木札』でわかりやすく管理しているということです。
佐藤小屋の前は、それぞれの山小屋のブルドーザーが集まるターミナルのようになっています。佐藤小屋をあとにして、再び上を目指します。
頂上に向かい右側に伸びる道は、『小御岳道』と呼ばれていたそうです。現在の富士スバルライン五合目にある小御岳社へ続く道であったことから、そう呼ばれたとのこと。
知っての通り、富士スバルライン五合目はバスの発着場であるので、もしここで体調が悪くなったときは小御岳道を進み下山の途に就くといいでしょう。
僕は、引き続き山頂を目指して進みます。
里見平★星観荘の前に出ました。何です、この★は。
トイレ利用、200円。星観荘を通過。
経ヶ岳。日蓮上人が書写した法華経を埋納した所と言われ、名前はそれにちなんでいるとの説明書き。
六角堂常唱殿と日蓮上人像。
妨げられることなく、山容を拝めるようになってきました。
六合目 安全指導センター(2,390m)
北口本宮冨士浅間神社から6時間かけて、六合目の安全指導センターに到着しました。ここは、富士スバルラインからやってきた登山客と合流する地点でもあります。
センターに併設されたプレハブで、『富士山保全協力金』(1,000円)を支払います。引き換えに記念品として、富士山保全協力者証(木札)がもらえます。今年の吉田口は、2種類のデザインから選べます。僕は、富士山っぽい八角形の方にしました。
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ここではもう『吉田口登山道』という表記は見かけません。六合目より上は『吉田ルート』の表記が主流のようです。
6時間前、あの市街地のどこかにいたかと思うと、人間てすごいなと思いますね。
何らかの施設がありますが、閉鎖しています。この先に下山道との合流地点がありますので、比較的混み合う場所です。
僕がすでに10km以上も歩いているなんて、周りの登山客はまさか思わないでしょう。白い雪が見えますが、登山道は“かいてある”と安全指導センターのおっちゃんが言ってましたね。
『富士山山頂まで4.7km』なんて、これまでの道のりに比べたらどうってことないように思えますが、ここからが登山本番です。
天気が良ければ、この辺りで山小屋が望めます。山小屋名を付けておきました。これからこの山小屋の前をすべて通ります。
これねぇ、見た目以上に角度があるんですよ。なんだか、聖闘士星矢の十二宮(サンクチュアリ)のように見えてきます。
さっそく、白羊宮花小屋が見えてきました。
七合目 花小屋(2,700m)
アリエスのムウはいませんでしたが、お願いすれば金剛杖に焼印(200円)を押してもらえます。
吉田口のすべての山小屋には、必ずトイレが併設されています。吉田口はだいたい200円となっているようです。
本日は八合目の東洋館に宿をとっています。3,000mラインの山小屋なので、高山病にならないかが気がかり。
日の出館を通過。
建物の間を抜けるように登山道が作られています。
七合目トモエ館で休憩。トモエ館は本八合目にもあります。
トモエ館名物クリームパン(300円)が美味しい。
次の山小屋に少し登れば着くのが、七合目のいいところ。
鎌岩館を通過。
富士一館も通過。
赤い鳥居が見えてきました。
鳥居荘を通過。半袖では肌寒さを感じるようになってきました。
ひときわ新しい建物が見えてきました。東洋館です。
宿泊 東洋館(3,000m)
本日の宿、東洋館です。もし宿をとらないとなると、山頂に着くのは20時ごろと予測されます。日のある時に登りたいのと、体力を回復したいというのもあるので、ちょうどいいと思われる東洋館に予約をしておきました。
ポイント
日帰り登山を計画しているのなら、五・六合目を早朝に出発する必要があります。
2007年にリニューアルされたとのことで、モダンな山小屋という印象を受けます。ノースフェイスの寝袋が1人に1個ついています。
夕食はハンバーグ和定食です。なんと、ごはんはおかわり自由!朝食のお弁当もこの時に支給されます。
いなりずしにおかずが付いています。
方角的に日の入りは見えないそうですが、この日は天気が良くて素晴らしい夕焼けを見ることが出来ました。なぜか、山中湖の上空にオレンジ色が反射していました。
山小屋のスタッフさんに聞いたところ、山頂で御来光を見ようとすると、登山道で渋滞に巻き込まれるとのこと。おすすめは、ここで御来光を拝んでから出発するプランとのことなので、それに従うことにしました。