仁丹とアラザン

 2018/09/01

似て非なるもの、ということわざがある。一見似ているが中身は違う。どちらか一方の立場からすれば他方はまがい物であるという意味合いがある。

仁丹じんたんとアラザンは、見た目は似ているのに個性はまるで違う。仁丹は生薬を固めた銀色の粒で、アラザンはケーキなどお菓子にのせる銀色の甘い粒。

おいしそうなスイーツにふりかれられているのが、実は仁丹だったら面白い。


買って比較してみた

今の若い人は仁丹自体を知らないかもしれない。僕も口にしたのは遠い昔だ。祖父が食べているのを横からねだって食べていた。口の中がスースーした位の記憶しかない。

手に入れたいけど、取り寄せになるのかな…と思って近所のドラッグストアをのぞいてみたら普通に販売していた。

CMなど放送してなさそうだけど、今も現役の商品だったとはびっくり。もしかしたら、若い世代でも浸透しているのだろうか。詰め替え用があったので買ってみた。

直径2、3ミリの銀の粒。僕の身体が昔より大人になったからなのか、記憶してたのより小さく感じる。製造販売元は森下仁丹で、なんと販売は1905年からという。

一粒食べてみた。これは、…強烈。ひと噛みした瞬間ミントとか胃薬とかの香りが口の中ではじけた後、甘みの無いブラックガムの味がだらだらと居座っているような感じだ。一瞬、祖父のグレーの背広が頭に浮かんだ。人によっては年配の先生を思い浮かべるかもしれない。二日酔いの朝には効きそうな味である。

良薬口に苦しということわざを地で行くような仁丹だが、実際は医薬部外品なので薬ではない。記載されている銀箔は、本物の銀ということらしい。ただし、舌で転がすと黒い丸薬が露出するほど微量である。

そして、アラザンも容易に手に入れることが出来る。

スーパーのお菓子作りコーナーにはほぼ置いてある。ダイソーでは山のように売っていた。

こんなものもあった。カジュアルでお越しくださいと言われているのに、礼服で来ちゃった仁丹おじさん。

シルバー3ミリのアラザンを購入。仁丹よりもテカテカして見える。カリッとした歯ごたえで甘い、予想通りの味。

こちらも銀を使っている。もちろんコーティングとしてだろう。ちなみにアラザンの語源はフランス語で銀を意味するアルジャン(argent)であり、むかし銀が経済の中心だったことから『お金』そのものもアルジャンと呼ぶらしい。なるほど、アラザン(お金)をたくさん使うとケーキ(景気)が華やぐというのはこれいかに。…さて。

一見すると同じものに見える。どっちか一粒渡されたら判別に迷う。お風呂の栓についているあのジャラジャラのやつをここに混ぜたらもう収拾がつかないだろう。

歩き始めた幼児のように気付いたらチョロチョロしてるので、未使用のコンタクトケースに入れた。
左が仁丹で、右がアラザン。

人は見た目で判別できるか

似ているなぁと思うけど、客観的に確かめてみたい。お菓子にトッピングしてあるアラザンを、仁丹にすり替えたら人は気付くだろうか。ミスドで買ってきたドーナッツに細工をしてみた。

これは元々アラザンが付いてないドーナッツに、仁丹とアラザンをそれぞれ付けたものだ。アラザン付きのお菓子がなかなか見つからなかったのだ。さて、どちらがどちらかわかるかな?あれどっちだっけ。

去年、登山の記事で手伝ってくれた桂君に食べてもらった。自然な流れで渡したが、仁丹だと気付くのだろうか。結論から言うと、普通に食べた。

「差し入れ持って来たんで。ドーナッツ好きですよね?」
「大好きです!ありがとうございます!いただきましょう。」
「どうですか?」
「コレまさかハンドメイドじゃないでしょうね?」
「今日買ってきたやつです。あまり喜んで無いようですが。」
「撮られてるのと、急に差し入れられたのとで疑心が…。味は問題ないです。」
「実は銀色の、仁丹なんですよ。」
「全然味わわずに食べた…。」

怪しんでいたにもかかわらず、仁丹を食べた(丸飲みした)。ということは、やはり見分けがたいものなのだろう。

彼は仁丹は知っていたが食べたことはないという。おそらく実物を見たのも今回が初めてだろう。ちなみに、先にひとつ渡してくれると思って手前側にアラザンの方を配置したのだが、それをくれなかったので危うく僕が仁丹ファッションを食べる羽目になりそうだった。

もう一人試してみたい。そうだ。去年、大容量菓子を食べてくれたアイツに食べてもらおう。今、個展を開いているという事なので差し入れとして渡す事にした。

今度は仁丹ファッションひとつだけ自然に紛れ込ませた。

「もらってください。」
「アヤシっすね」
「ちょっと食べてもらっていいですか。」
「プレーン部分はおいしいけど、青リンゴ部分はまずい。」
「実は仁丹。」
「臭かったかもしれない。ちょっと変な匂いしたかな。」

きくちゆうき氏(@yuukikikuchi)であるが、怪しんだので理由を付けて食べさせた。味に違和感を感じたようだが、仁丹とアラザンを見分けることは出来なかった。そもそも仁丹を知らないようなのでフェアでなかったのかもしれないが。

いろいろ使わせてもらったが、ミスドの青りんごファッションは、本来とてもおいしいのでぜひ食べていただきたい。

食べずに振り分ける方法を考える

前述の実験から、人は見た目で仁丹とアラザンを判別するのは難しいというのがわかった。いきなりドーナッツを提供されるという、この上なく怪しい状況でもこのような結果だ。これはやはり両者が似ているという裏付けになる。これが、正露丸とアラザンだったらこうはならないだろう。

では、見た目以外で両者を判別するものはないのか。匂いや重さを測定したりCTスキャンなどいろいろあると思うが、僕にでも気軽にできるものはないだろうか。

!!

僕は秋葉原の電気街へ走った。

電気を通してみれば何か起こるのではないか、いや起こってほしい!その思いから、小学校で学ぶ『電気を通すものを調べよう』という実験を行うことにした。

3mの銅線含めしめて280円。(電池は除く)

このようにつなげて、

銅線を接触させれば豆電球は点灯する。この実験は小学校3年生でやるらしい。

本物の銀が使われているという事であれば、ここに挟めば豆電球が点くはずだ。仁丹スタンバイ。

ホントに点いた。水に濡らして銀をはがしてやってみたら全く点かなかった。では、アラザンはどうか。

写真ではうまく撮れなかったが、こちらもかすかではあるが点いた。ただ、グッと押さえてやらないとだめだ。なぜだろう。どちらも金属の中では電気を通しやすいと言われている銀を使っているんじゃないのか?

調べてみると、金属に限らず大体のものは電気を通すらしい。電圧をどんどん上げれば木や空気でさえも伝っていく。そして物質にはそれぞれの電気抵抗の大きさがあって、温度によってもその大きさは変わる。金属であればその純度によっても違うのだろう。ただ両者の点灯具合に差が出来た本当の理由はわからない。ここには、電気抵抗の低い銀と高い銀があるだけだ。

コンタクトケースに銅線を突っ込んでも仁丹は通電した。

身の回りのもので試してみたくなった。小三病である。

カシューナッツは電気を通さない。

コアラのマーチも通さない。もっと面白く縛る技術があればなあ。

シャープペンの芯は通す。1.2ボルトの電池1個ではこのような結果になることがわかった。

話が脇道にそれたが、この電気抵抗の差を利用して仁丹とアラザンを判別したい。

仁丹判定器、完成す

仁丹を判定する機器が完成した。動画をご覧いただきたい。

仁丹かアラザンかを食べずに確実に言い当てなければならない時に、これを使えば判別することができるのだ。仕組みを説明しましょう。

全体図

家電を買った時についてくる発泡スチロールがあればいい。

まず仁丹かアラザンが上部に取り付けたストローに入ると、

適度なスピードでプラスとマイナスの被覆材が付いたままの銅線の間に落とされ、

そのまま、レールのようになったむき出しの銅線に滑り出る。

仁丹なら豆電球が点灯し、アラザンなら点灯しないという高度な仕組みである。
そのまま銅線部分に置けばいいのに、なぜストローを通すのかと物言いをつける人もいるだろう。それは、“銅線に置く→点灯する”というアルゴリズムを“穴に投入する→点灯する”へすり替えることによって、「うん、なんかすごいかも」という漠然とした好奇心を煽るためである。そして、そうなってると信じたい。

アラザンの場合も見ていただこう。

個体によってはかすかに点灯するかもしれない。

男は黙って仁丹

仁丹判定器を持ち歩いている限り、僕はスイーツに仁丹がトッピングされてても気付くことだろう。ただし、今回使ったメーカーくらい電気抵抗の高いアラザンである事や、サイズなどの条件が整えばの話だが。

不思議な事に、一粒目よりも二粒目、二粒目よりも三粒目と口にするごとに仁丹への抵抗感はなくなっていった。一気にボリボリと噛むことに、一種の度胸試しのような高揚感さえ感じるまでになった。この匂いをまとって誰かと会えば、人によっては僕に年配の方を重ねるのかもしれない。

カチカチ玉は電気を通すだろうか。

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