はじめての四国八十八ヶ所霊場めぐり ~ “修行の道場” 高知編 6日目
高知県6日目 | 2016年9月23日 |
---|
お遍路最長区間の先で待つ浄土 金剛福寺
岩本寺の宿坊にて、6日目の朝を迎えました。徳島の発願から13日目です。修行の道場と呼んで立ち向かってきた高知の遍路も、残るは金剛福寺と延光寺のみとなりました。本日目指す金剛福寺までは約90kmの距離があり、寺間距離としてはお遍路中で最長ですが、自転車なので道草食っても夕方には着くでしょう。
さて、岩本寺では朝の6時からお勤めが行われております。本堂の扉を開け放してやっているので、宿坊利用者じゃなくても参加可能かもしれません。詳しくは岩本寺さんにお問い合わせください。
とは言っても朝6時ですからね。参加者は10人くらいしかいませんでした。
出発の支度のため部屋に戻ると、昨夜部屋の外で光っていたものの姿が明らかになっていました。
白日の下にあらわになったものが結局正体不明っていう。昨夜と点灯部分が違っています。とりあえず線路関連の機械だろうということにして、宿坊をあとにします。
御宝号の入った線香が1本50円で売られていましたので、今後の無事を祈って奮発することにしました。
これだけ立派なものを使ったのですから、ご利益がないわけないので道中楽しみです。不動明王さん、よしなに頼みますぞ。
そういえば、昨夜会った酔っぱらいのじーさんを見ていません。じーさんは朝のお勤めにも顔を出さなかったので、部屋の前で別れた切りになってしまいました。
でも、おそらくは僕のことは覚えていないでしょう。酔ってたし。
納経も済ませました。買った手ぬぐいを頭にギュッと巻いて、90km先の金剛福寺へ向けてスタートします。
第38番札所 金剛福寺
国道56号線を南下中、右側に休憩所を発見。
休憩所の脇に立っている看板によると、この辺りに「お参りをすると失せ物に気付かせてくれるお堂」あるとのこと。地元の人達は、願いが叶った時には“白豆腐”をお供えするのだそうです。
今日も国道沿いを進むので食料の心配がありません。そのため朝食を摂らずに走っているんですが、もう一つ理由があって、実はお遍路前から行ってみたいと思っていた場所があるんです。それは、遍路道沿いにある『いろりや』といううどん屋さんです。ご存知の方も多いでしょうが、『水曜どうでしょう』で大泉さんが絶賛しているお店です。
『いろりや』のうどんを、最大限おいしく食べるため道の駅なども通り過ぎます。
横浜トンネルが見えてきました。
トンネル自体は歩道が広くて快適だったんですが、抜けたところで不測の事態に見舞われました。それは自転車のチェーンが固まる、いわゆる“チェーン落ち”というやつです。
なんかの拍子にチェーンがギアとフレームの間に挟まってしまったのです。テントバッグに入っていたペグでこじってようやく外れましたが、結局30分もタイムロスしてしまいました。もしペグが無かったら、僕は今でも高知の片田舎で悪戦苦闘していたかもしれません。
そうこうしていると、
さっきので“チェーン落ちグセ”が付いてしまったのか、再びクランクがロック。度重なるタイムロスに加え、手も汚れて、余計な汗もかいて少し疲れました。
予定外ですが、休憩がてら看板のないたこ焼き屋に立ち寄りました。注文のついでに、お店のお兄さんに店名を掲げていない理由を聞いてみると、「この前の台風で吹き飛ばされちゃって」とのこと。ずいぶんタイムリーなことを聞いてしまいました。
近くの東屋に腰を下ろして、さっそくパクついてみました。ひとことで言えば、どこか懐かしいような素朴な味わい。値段も良心的ですが、一介の旅人に快く手洗い場を貸してくれたお兄さんの心意気に感謝したい。
途中、ヤマト運輸の営業所へ。
まだ使うかもしれないと自転車のキャリアに積んでましたが、明日の帰京までに野宿する可能性はなくなりましたので、一足先に帰ってもらうことにしました。ペグ1本を除いてテントバッグを東京の自宅へ送ります。
身軽になったところで、黒潮町にあるいろりやに到着。本日のちょうど中間地点。
『水曜どうでしょう』の聖地のひとつなので、こちらも“巡拝”と呼べるかもしれませんね。ちなみに、大泉さんの数珠はファンの人がディレクターに届けたそうです。店員さんがそうおっしゃってました。
2杯いこうか大盛りにしようか迷っていると、店員さんが「最初普通盛りにして、大丈夫だったらまた注文してもらえれば。」と言ってくれました。お昼時で混んできたのに、ありがたい言葉だ。さっそく釜玉うどんを注文しました。
コシのある麺にからめるは特製のだし醤油。すだちもさっぱり感を演出していて、シンプルですが飽きのこないうどんです。
せっかくなので、肉醤油うどんも頼みました。
甘口の牛肉が疲れた体に染み込むようで、こちらも非常に美味しかったです。
味もさることながら、フレンドリーな店員さんにも魅力を感じました。またひとり、ファンを増やしたいろりやでした。
ふと見ると、自転車のワイヤーロックを取り付けるブラケットのねじがサビていました。これまで走ってきた高知の遍路道の多くが海岸線でした。潮風の中をともに駆け抜けてきた相棒をねぎらいたいと思います。
国道56号線を外れ、高知県道42号線で足摺を目指します。
気のせいか、高知の川は青く感じる。
お遍路道しるべを頼りに進みます。そして、土手を越えるとひと際大きな川にぶち当たりました。四万十川です。
最後の清流と呼ばれる四万十川。晴れた時に見られてよかった。
澄んでいるというより青く濁って見えるのは、もしかしたら今回の台風が原因かもしれません。
ここから国道321号線に合流して、四万十川沿いに南下します。
写真でわかりにくいかもしれませんが、四万十川が2色になっています。コントラストがくっきりと。ここがちょうど中筋川という支流との合流地点なのです。
四万十川と別れ、勾配を感じるようになりました。
伊豆田トンネルは、夜には通りたくないトンネルでした。怖いから。昼でも怖いと思うということは相当でしょう。
トンネルを抜けると、いかにも山あいといった風情の集落に出ました。
めっちゃおいしいそうな字のたこ焼き屋さん。(ネット情報では、現在の店名は「もりちゃん」とも「もりもり」とも)
久方ぶりの海岸。
ジョン万次郎の故郷なんでしょうか、この辺り。
金剛福寺に行ったあとは、再びこの道を通ることになります。
歩き遍路なら民宿の利用はマストになるでしょうね。行きと帰りで、違う宿に泊まるのも面白いかもしれませんね。
「砂浜にテント張って野宿」と考えている方、土佐湾沿い、特に西部には砂浜が意外と少ないです。
初めて行く海岸でキャンプってのも少し危険な気がしますし。善根宿やヘンロ小屋を利用するのがいいかと思います。
そこにあって、大岐海岸(大岐の浜)は遠浅のきれいな砂浜です。
波待ちのサーファーたちもたくさんいます。テントもありますね。こういう所に住むのも憧れます。けど、ジャンクなものが無性に食べたくなるたちなので結局ムリかなぁ。たこ焼きだけでは埋められないなぁ。
ここまでお遍路さんを見かけることが少なくて若干不安でしたが、金剛福寺に到着するとウザいくらいにわんさかいたのでほっとしました。
ついにたどり着いた四国最南端のお寺。いったん山門の前を通り過ぎて、宿坊にチェックインします。
16時の到着はおおよそ予定通り。女将さんが出てきて、部屋の案内をしてくれます。支払いは夕食後とのこと。他の宿泊者の姿は今のところ見ていない。
なかなか昭和の香りがする宿坊です。お部屋は床の間のある8畳和室です。鍵という概念はありません。
納経所が閉まるまで1時間を切っているので、ゆっくりもしていられないのだ。いったん荷物だけ置いて金剛福寺へ。
金剛福寺は境内の真ん中に池があります。
三十八番 金剛福寺! pic.twitter.com/YP6eQM8UG2
— ちょうちょう (@icedivider) 2016年9月23日
不思議なもので、お寺の中で池を見るとハスの葉が連想されます。さらにハスは極楽浄土を連想させるため、僕の中では池がある寺はワンランク上なのです。
17時までに納経も間に合いました。汗を流しに宿坊へ戻ります。
18時前に風呂から上がって、そのまま食堂へ。僕を入れて同宿の6人が集まりました。箸袋に書かれた文字を皆で見つめます。どうやら食事作法というのがあるらしい。「しょくじ」ではなく「じきじ」と読みます。
女将の手引きで、皆で合掌しながら唱えます。“いただきます”の正式なバージョンかと思われます。60代の男性、女子高生とそのお母さん、男子大学生コンビ、そして僕。宿坊がなければ会わなかったと思うと不思議です。ちなみに料金は1泊2食で6,500円ですが、夕食でビールを頼んだ人は追加料金となるようです。
お遍路も折り返しだ。思えば遠くへ来たもんです。焼山寺も太龍寺も、はるか昔のことのようです。いよいよ明日、延光寺の到着をもって高知編が終わります。
そういえば、帰りの交通手段をまだ確保していなかった。幸いネットがつながるので、夜通し調べよう。自転車をどうするかも。帰るのか、いやだな。