はじめての四国八十八ヶ所霊場めぐり ~ “修行の道場” 高知編 4日目

高知県4日目2016年9月21日

農道の遍路道を行く(国分寺→善楽寺)

ごめん・なはり線 唐浜駅前広場にて、4日目の朝を迎えました。高知に来て2回目の野宿です。突然ですが、お遍路さんが使う宿といえば、みなさんは何を思い浮かべますか?民宿やホテル、宿坊などが一般的でしょうか。ただ、宿代が1泊6,000円前後なので、それが10日、20日となっていくと馬鹿になりません。そこで、野宿や通夜堂、善根宿などをはさんでいくのが、多くのお遍路さんのやり方です。四国ならではの文化でもあるので、僕もできるだけ利用していきたいと思っています。


朝6時の唐浜駅

ここ唐浜駅は野宿スポットでもなんでもありません。夜は自販機の音と明かりだけが支配する世界ですが、たまに車の出入りがあったようです。

唐浜駅前 多目的交流広場

地域のイベントとかも行われるらしいです。さて、人が来る前にテントをたたんで出発します。

『真っ縦』入口

神峯寺まで3.5km。土佐の遍路ころがしとも言われる『たて』を登ります。ギアをローに落として、起き抜けヒルクライム。

棚田を横目に登る

もう、稲の収穫が始まる時期かな。今日は少し寒い。つば飲み込んで耳抜きしながら上がって行くと、左への分岐がある場所に出ます。

大日寺への分岐

神峯寺から帰ってきたら、ここを曲がって大日寺へ行くようです。真っ縦の途中に公園があって、東屋の下にはテントが一張り。

九丁公園

お遍路さんでしょう、菅笠がテントの前に置かれていました。ちなみに、この辺りは桜の名所でもあるそうです。

神峯寺駐車場

約1時間かけて、神峯寺まで登ってきました。標高400mを越えているようです。神峯神社の鳥居が張り合うように建っています。

神峯寺の山門と、神峯神社の鳥居

現在では神峯神社は、神峯寺の奥の院という位置づけになっているらしいです。この鳥居をくぐる人は少ないのか、石段の雑草の浸食具合に盛衰を見た気がします。

神峯寺 境内

おっと、雨がしとしと降ってきました。

土佐の名水『神峯の水』をいただいてから、本堂まで上がります。

不動明王像の前を通り過ぎる

23番札所の薬王寺なんかは、いつも参拝客であふれてる気がしますが、このお寺には驚くほど人がいませんな。朝だからでしょうか。

本堂

静謐と閑散。背中合わせの言葉ではありますが、こちらの寺を表すのに言い得て妙かと思います。

『木造弘法大師坐像』が鎮座する大師堂

秘仏である本堂の本尊に比べて、こちらは「どうぞ見てください」と言わんばかりの丸出し状態。

納経帳

レインウェアをまとって、次の大日寺へと向かいます。山の上じゃないといいなあ。雨が強くなってきました。

第28番札所 大日寺

髪がびしょびしょ

来た道をハイスピードで下ります。標高を考えれば、“下山”と言ってもいい。

国道55線を右へ

安芸市に入りました。最近できたとみられる大山トンネル(1,332m)を通過。

大山トンネル

トンネル内の歩道が狭かったので車道を走ったのですが、車と接触しそうで怖い上に排気ガスがきつかったです。遠回りにはなりますが、自転車なら海岸沿いの下道を通る方が無難かもしれません。下道には『道の駅 大山』もありますし。トンネルを出てしばらく進むとコンビニがありましたので、遅めの朝食をとります。

雨止み間近か

遍路道のどこかにはコンビニや自動販売機があるので、飲食の心配がありません。“桂浜”という文字が見えてきました。

桂浜まで33km

雨が止みました。ちょうど塀越しに海が見られるようになっていたので、自転車を停めて撮影していると、偶然とある方との出会い!

ハギモリさん
これよりも進むいうことは…、おいちゃんハギモリいうきに。自分、遍路やろ?
あ、そうです。
ハギモリさん
ハギモリいうから。ほんで、これまっすぐ行きよったら、右っかわにハギモリいうて看板かかってるから。
ハイ。
ハギモリさん
それをずーっと行きよったら、今度国道と一緒になるから
ハイハイ。
ハギモリさん
その前にサークルKがあるきに。ほんだらおいちゃんのリストがあるきに。10円出してもろうていき。
あ、何があるんですか?
ハギモリさん
リスト。どこどこに泊まれるいう。

歩き遍路をしている人なら誰もが知っている善根宿リストというのがあるんですが、僕に話しかけてきたのは、そのリストの作成者である萩森さんだったのです。

お遍路初日で見た善根宿リスト

↑コレですね。そうは言っても、誰が作ってるかなんて意識していないもんですから、コレ作ってると聞いた時は「えー!あのリストっすか!めちゃくちゃ参考にしていますよ!」と驚きを禁じえませんでした。おすすめ宿なんかも教えていただきました。

おそらく、萩森さんはお遍路さんを見つけたら、このように声をかけているのでしょう。萩森さんは室戸方面に走り去っていきました。

自転車道があるようだ

萩森さんとの邂逅で、若干テンションが上がってしまいました。例えるなら、YouTubeの設立者が突然現れて「どう、YouTube見てる?」って言われるようなもんですからね。うん、たぶん合ってる。

海岸沿いの自転車道を進む

こちら『高知安芸自転車道』は、安芸市・芸西村・香南市にまたがるサイクリングロードです。

遍路道でもある

“自転車道”とはいえ、徒歩でも利用が可能。もちろんお遍路さんも。進んで行くと、萩森さんの言っていたサークルKを発見。

サークルK芸西店(当時)

“萩森リスト”はネットで情報の閲覧が可能ですが、アナログな紙媒体で持ち歩くというのもまた一興。

“萩森リスト”を入手

コピーさせていただきました。

香南市に突入

今日の宿なんですよ、問題は。まだお昼前なので、予約をしていません。

隧道

狭い隧道を抜けると、ちょっと変わった光景が目に入りました。道路が縦になってる?

手結港可動橋

工事中かなんかかと思ったら、れっきとした橋のようです。船舶を通過させるためのものですが、地域振興という側面もあるらしい。ありゃ、遍路道を見失ってしまいました。

香宗川を経て国道55号線へ

江見排水機場という建物から、黒い煙がもくもくと出ていました。何だったんでしょう。

高知黒潮ホテル手前のアンダーパス

国道55号線をいったん逸れ、大日寺へ向けラストスパート。

県道22号線

香南市役所前を通ります。

創造広場『アクトランド』をスルー

こちらは、アスレチックとか龍馬歴史館とか、世界偉人館とかが集まった複合施設のようです。

向かっている方向にある山の上に、変わった建物が見えます。

山の上に建物がある

あれが大日寺だとしたら、あそこまで登るのはダルいわけですが、近づくにつれ“城”であることが判明。どうやら、かつてテーマパークの一部だった『シャトー三宝』という建物らしいです。田舎によくある感じのラブホテルかと思いました。ここを通るお遍路さんのほとんどがそう思うに違いありません。

大日寺駐車場入口

歩き遍路用の参道も別にあるのですが、階段で上がるようになっていたので、車と同じ場所から入ります。

大日寺 本堂

徳島の4番札所と13番札所に続き、3つ目の『大日寺』。大日如来がご本尊です。

発願時に買った線香が無くなったので、山門前のお遍路用品店にて補充。

第29番札所 国分寺

はっきりみちしるべ

時刻は正午。ここからは寺間の距離が短めの“密集エリア”です。

国分寺まで8.8km

なるべく歩き遍路と同じコースをとっていきたいと思います。

棒人間お遍路さん

狭い路地も通ることになりますが、それもまた趣深い道であることでしょう。

県道234号線で香美市へ
この場所をGoogleMap ストリービューで開く

よくわからない場所に出てしまいました。そして、どこをどう走ったのかもわかないまま、いつのまにか南国市へ突入。

「国分寺まで0.4km」の案内標識

迷走しながらも、国分寺へ到着しました。

四国各県に1つずつある、八十八ヶ所の『国分寺』。こちらは『土佐国分寺』とも言うらしいです。

 お遍路POINT その21
88のお寺の中には同じ名前がいくつかあってこんがらがる。
  1. 国分寺…15番、29番、59番、80番
  2. 大日寺…4番、13番、28番
  3. 観音寺…16番(かんおんじ)、69番(かんのんじ)
また、「たいさんじ」だけでは52番太山寺か、56番泰山寺かわからないというように、同じ読みで漢字違いパターンというのもあります。
このほか、53番円明寺と54番延命寺の、どっちが「えんみょう」でどっちが「えんめい」かわからなくなる問題もなおざりにはできません。
国分寺 参道

何でもこの辺りは、平安時代に国府が置かれ、土佐の政治・文化の中心だったらしいです。その割には、これまでの寺の中でも、とりわけ質素に感じます。

本堂

お寺はかくあるべきということでしょうか。そう考えると、豪奢な寺よりもひときわ響いてくるものがあります。

第30番札所 善楽寺

善楽寺まで6.4km

遍路道しるべが示した先は砂利道。とても情緒あふれる農道ですが、自転車なので迂回。歩き遍路がうらやましい。

農道遍路道

道端には、歩き遍路と車遍路用の案内が充実しています。自転車遍路専用の案内というのはないため、現場で“歩きでしか行けない道”や“車でしか渡れない道”を回避してのルート選択が必要となってきます。大きく迂回をしなければならないこともあるし、うまくリカバリーできなくて時間や労力を消費する時も。お寺の密集する都市部だと起こりがちかもしれません。

たこ焼ハウス 逢坂』

たこ焼き小屋を見つけると写真を撮ってしまいます。そうこうしながら高知市に入り、善楽寺に到着。

十一面観世音菩薩がお出迎え。

善楽寺 境内

30番札所が2箇所並立する時代もあったようですが、境内はいたって平和。

本堂と大師堂

納経所の人と雑談。次の札所までのルートを教えてもらいます。丁寧に教えてくれるめがね女子に癒されました。

31番竹林寺への地図をもらった

道路をはさんだ向かいには、土佐国一宮の土佐神社があります。

土佐神社楼門

善楽寺はもともと、土佐神社を管理するための“別当寺”だったんですって。

第31番札所 竹林寺

大谷川沿い

久しぶりに太陽を見た気がします。台風一過の遍路道は、いつにも増して清々しい。

県道44号線

それとともに気温も上昇。汗かいているので、今日は風呂につかりたいです。

竹林寺がある『五台山』を目指す

五台山公園の車両入口から登ります。自転車を押しながら登っていると、散歩中のおじさんから「お四国さんですか?」と聞かれました。お遍路をする人のことを、親しみをこめて“お四国さん”とも言うようです。

飴のお接待

前からやってきたおばあさんから飴をいただきました。僕だけじゃなく、作業中のおじさんにも配っていました。

うねうね道を進みます。

竹林寺前

ちょっと迷いましたが、到着。昨夜、何らかのイベントをしていたらしく、片付け中の竹林寺です。


石標に『文殊大菩薩』と書いてありますね。山門をくぐる前に、飲み物を買うため売店へ。お店の人から、「歩き遍路ですか?」と聞かれたので、自転車遍路であることを告げました。すると、こうやくんクッキーと高野山の麓でしか採れないなんちゃら柿の干し柿をいただきました。

干し柿のお接待

どうやら、「歩き遍路している人に渡してほしい」と先達さんから預かっているのだとのこと。『先達』というのは、知識が豊富であることはもちろん、「4回以上巡礼していること」「お寺の推薦をもらっていること」など、いろんな条件をクリアした人だけがなれる、いわばお遍路のスペシャリストのことです。

工事中でもあった

歩き遍路と同じくらい頑張ってるからということでいただけたんでしょう。歩き・自転車遍路と、車・バイク遍路との間には、やっぱり1本の線がありますからね。

苔むしてる境内

本尊は文殊菩薩で、智慧(知恵)を司る仏のようです。ちなみに、文殊菩薩を本尊にしているのは、88寺中でここだけとのこと。

竹の杖の貸し出し

そう言われれば確かに、ご真言の「おん あらはしゃのう」ははじめて唱えた気がします。他に有名なものとして『竹林寺羊羹』があります。せっかくなので、ひとつ購入してみました。

名物 竹林寺羊羹(200円)

竹林寺だけに、どことなく竹筒っぽい外装。切り分け用の糸がついているので、シェアもできます。僕は羊羹をほとんど食べたことがないのですが、たぶんおいしいと思います。

善財童子

無心で道を求めた善財童子のパワーにあやかるために、像の頭をいいだけナデナデしました。

第32番札所 禅師峰寺

五台山からの景色

今日中に次の禅師峰寺に行けるかどうかですね。納経所が閉まる17時までには着きたい。宿も決めておかねば。

禅師峰寺← | →善楽寺
下田川
武市半平太史跡 駐車場

『龍馬伝』でもおなじみ、武市半平太の旧宅がこの辺りにあるようです。

トンネルを抜けると池

石土池を左手に見ながら進むと、黒潮ライン(県道14号線)に差しかかります。道しるべ通りに進みます。

ここを上って左折

言われるがままに上って左折すると、さらに案内板は急な上り坂を指していました。しっかし小高い山の上に寺建てるの好っきゃな。

禅師峰寺 駐車場より

団体のお遍路さんたちが列をなして、参道を上がって行きます。なんか既視感あるなと思ったら、聖闘士星矢でデスマスクに積尸気冥界波せきしきめいかいはくらった紫龍が見たシーンと同じでした。

駐車場からの眺望(黒潮ライン)

なんとか17時前に着くことが出来ました。駐車場に自転車を停め、参道を上ります。

参道の水子観音像

余談ですが、地元では禅師峰寺は峰寺(みねんじ・みねでら)と呼ばれているらしいです。

お菓子の無人販売

本日の巡拝はここまで。雪蹊寺は明日にしましょう。

禅師峰寺 本堂

本堂前で団体さんが詰まっているので、しばしベンチに座ってやり過ごすことにします。そうだ宿の予約をしよう。むう、雪蹊寺の向かいのお遍路宿『高知屋』に空室確認しましたが満室とのこと。ですが、その少し先にあるリーズナブルなホテルが取れましたので、そこを目指すことにします。

ベンチからの眺望

薄明光線がきれいだったので、動画で撮ってみました。

お経を上げ、納経所に立ち寄って出発。目的地は、雪蹊寺近くの『ホテルSP‐haruno‐』です。

第33番札所 雪蹊寺

浦戸大橋

雪蹊寺の途中で浦戸大橋を渡ったのですが、これが恐怖を感じるほど狭いです。自転車だったりザックだったりがフェンスやガード柵に引っかかって、その勢いで車道にはみ出して車と接触!なんて危険もありえそうなほどです。路肩のスペースもありません。

フェンス
Googleマップ ストリートビューのキャプチャより

みんなこんな怖い橋を歩いて渡っているのかと思いきや、どうやら浦戸大橋を使わず、県営の渡し舟で桂浜側に行く方法もあるようです。それ魅力。

桂浜への分岐
歩道に逃れる

有名な龍馬像を見たい気持ちもありますが、海岸線を西へと向かいます。そして、順調に道を間違え、一軒のコインスナックの前にたどり着きました。

コインスナック和

カップライスの自販機がありましたが、中身はカップヌードル。しかも、運悪く壊れている模様。ホテルは素泊まりで予約したので、何か食べておきたい気分。

販売中止

しかたなく稼働中のベンダーで、パンを買っておきました。

ホテルSP‐haruno‐に到着

『ホテルSP‐haruno‐』は春野総合運動公園内の宿泊施設です。33番札所雪蹊寺と34番札所種間寺の間に位置しています。

フロントでキーを受け取る

今日は大浴場を使用しておらず、部屋の浴室を使ってほしいとのこと。宿泊者はあまりいなさそうですが、宴会場はにぎわっていました。

洋室タイプ

予約時に聞いておりましたが、3階客室まではエレベーターはありません。朝夕付きのお遍路さん応援プランみたいなものもあるようで、雪蹊寺や種間寺に無料送迎の特典付きとのこと。僕は予約した時間が遅かったので、食事なしプラン(4,250円)にしてもらいました。

洗剤50円

地下のコインランドリーで、2日分の洗濯もすることが出来ました。(洗濯機200円、乾燥機100円)

明日も雨だ

フロントの方の話によると、付近にコンビニが2軒あるようなのです。しかし、ここの敷地が広大なため、もう一度外に出て買いに行くのが億劫です。パンじゃお腹はふくらみませんが、空腹よりも疲れが勝っているため、とりあえず明日の朝までは我慢しましょう。たしかフロント前にお菓子やアイスくらいは売っていたかと思いますので、いざとなったらそれで。

全然関係がないのですが、高知県ではテレ朝系列が見られないと知って驚いた次第です。

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