はじめての四国八十八ヶ所霊場めぐり ~ “修行の道場” 高知編 3日目
高知県3日目 | 2016年9月20日 |
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立ち入り禁止の貼り紙(津照寺)
『東の紀伊水道、西の土佐湾』2つの海域を分けるように切り立つ室戸の海岸段丘。その段丘面で巡礼者を迎え入れる古刹には、荒波の打ち寄せる音は届きません。まるで俗世を諦観するような静かなたたずまいを見せます。そう、今日以外はね…。
朝起きて、まずチェックするのが天気予報なのですが、午前中の予定が“停滞”になることがすぐさまわかりました。
徳島で7日を要し、高知で3日目を迎えた本日は、ちょうど10日目です。節目の日ですが、こんな日もあります。10日に1回くらいは停滞をくらうのも織り込み済みです。
昼ごろがヤバい。強風域(黄色)広くないですか?今日は小学校も休校になることを、ローカルテレビ局のニュースが報じていました。
4階の観音堂にて朝のお勤めがあるというので、行ってみました。立江寺の宿坊ではお勤めは夕方だけでしたので初めての体験です。団体さんの多さも気になりますが、窓の外の木が大きく揺れるのも心配です。
団体さんとしばし待っていると、住職が登場。住職にしてはお若い方で、お母様が女将です。住職が読経をあげる時には、たまにみんなで声を出す場面があります。団体さんはすごいですね。お経が頭に入っているように、すらすらと読み上げます。
法話の内容は、真言宗をはじめとする仏教で使う数珠について。大変興味深いお話でした。内容はあまり覚えていません。終了時に、お大師様キーホルダーをいただきます。これでこの先、迷うこともないでしょう。
女将のアナウンスを聞いていると、なんだか大丈夫な気がします。
清掃のおばちゃんに聞いたところ「女将から聞いているので、大丈夫です。お部屋のテレビで予報を見ててください。」とのこと。同宿の歩き遍路Kさんが女将に掛け合ってくれたおかげで、台風が去るまでの間、滞在する権利を得たわけです。暑くても寒くても、その中を歩くのが遍路の宿命だと思っていたが、台風となれば話は別。お言葉に甘えさせていただくことにしました。
寸分の狂いもなく現在地に直撃しています。むしろ中心過ぎて、台風の目に入るんじゃないでしょうか。昼12時ごろまで部屋で待機して、頃合を見て部屋を出ました。
Kさんの部屋を見ると、すでに清掃のおばちゃんが入っているではありませんか。なんとKさんは“10時チェックアウト”をしっかり守って、すでにロビーに降りていたのです。
人間ができてる。Kさんは昨日から足が痛いと言っていました。今日はもう少し様子を見てから出発するとのことですが、あとひと月のうちには結願するでしょう。お互いの無事を祈りつつ、Kさんと別れました。
大きめの木の枝も、たくさん落ちています。昨日はきれいな道でしたので、相当な風が吹いていたことがわかります。
第25番札所 津照寺
暴風域を脱したという天気予報を信じて宿を飛び出しましたが、今でも強い風が吹いています。
寺が山の上にあるというのは厄介ですよね。「それが寺だ」と言われればそれまでですけどね。
こんな天気ではありますが、気分は高揚しているので不思議なものです。見守られながら続くという、特殊な旅の状況が影響しているのでしょう。たぶん遍路以外では得られなかったと思います。
足湯には水が溜まっていたので、浸かるのはやめときました。普段はどうなのかわかりませんが、この天候のおかげで出歩いている人は少ないように感じます。
いろいろヤバそうですね…。
津照寺に着きました。山の上じゃない寺です。
車で来る人は、港にある共用駐車場に停めるようです。
二十五番 津照寺! pic.twitter.com/gVtQqK2nzo
— ちょうちょう (@icedivider) 2016年9月20日
階段を上がろうとする僕の前に、立ちふさがるベンチが。台風の影響で本堂には立ち入れないとの旨が貼り出されています。
折れた枝なんかが散乱しているのかもしれませんね。参拝かなわず、大師堂のみでお経をあげ納経所へ。納経所のおばさんも、心なしか疲れているように見えました。朝の、あの暴風雨の中を出勤したのでしょうか。
第26番札所 金剛頂寺
濁流とまではいかないですが、台風の激しさを川の色が物語っていました。
そういえば、遍路センターでは朝食を頼まなかったので、朝からお腹が減っています。いい感じの商店で物色。デイプラスの天然酵母パンを購入しました。このパンってよく見かけるけど何者なんだろうと思ったその時、「お遍路さーん」という子供の高い声がしました。振り返ると一台の車が停まっています。運転席のお母さんから促されるように、後ろの子供達が「どうぞ」と差し出したもの。
それはお菓子のお接待でした。子供からのお接待ははじめてです。お母さんが「嫌いじゃなかったら食べてくださーい」と言って、すぐに走り去っていきました。元気のお接待。
金剛頂寺は山の上のお寺です。修行僧のような格好をした人が、小路から下りてきました。ここから登るのかなと思い、小路に入ろうとした時、御仁は僕を見ながら違う方を指さしました。小路は山道になってしまうようで、引き返す羽目になるところを助けてくれました。
自動車と同じ道を行きます。若干の登りになっていますが、数うねうねで金剛頂寺に到着。
二十六番 金剛長寺! pic.twitter.com/Ay5CKEg4j8
— ちょうちょう (@icedivider) 2016年9月20日
(字を間違えました。『金剛長寺』ではなく、正しくは『金剛頂寺』です。すみません。)
山門の仁王像の前に、大きなわらじが奉納されています。昔の人の履物がわらじであったことは容易に想像できますが、山門のそれが何を意味するのかはわかりません。道中の安全祈願とかでしょうか。
金剛頂寺は『西寺』と呼ばれています。第24番札所の『東寺』最御崎寺に対してです。
錯覚かもしれませんが、山の上のお寺には独特の静けさがありますね。人も少ないですし。
さて、納経所に寄ってから、来た道を戻ります。今日中に次の札所まで行けるか微妙になってきました。現在15時20分、次の神峯寺までは約30kmです。
第27番札所 神峯寺
納経所が閉まる17時まで約1時間半。
信号の少ない海岸の道なら平均時速20kmで進むことも出来ます。
行ける所まで全力でペダルを漕いでみます。
海岸段丘が美しいですね。スマホで距離を確認。
残り43分で17kmは微妙です。いや、これ山の上なので間に合いません。金剛頂寺と同じ感じなので、17時には着きません!
というわけで、あきらめました。神峯寺は明日行きます。休憩しながら神峯寺について調べてみると、
“真っ縦(まったて)と呼ばれる急な山道を登った山上にあり、「土佐の関所」また「遍路ころがし」と呼ばれる四国八十八箇所屈指の難所として知られた。”(Wikipediaより)
とのこと。いやいや、名前付いてるほど急坂だったんかい。
奈半利駅のイメージキャラクター『なは りこちゃん』は、高知県出身の漫画家やなせたかし氏のデザインによるのもだそうです。だと思いました。
しばらくは、ごめん・なはり線に沿って国道進みます。そろそろ決めなければいけない今夜の宿。テントを持って来ているので、今日あたり二日ぶりに野宿をしたいと思います!
神峯寺の近くに野宿できるところがあれば最高です。進みながら、寝床としてよさげな場所を物色。とりあえず、こちらの『道の駅 田野駅屋』は“キープ”で。ちなみにイメージキャラクターの名前は『田野 いしん君』だそうです。
自転車遍路の辛いとこ、登り坂。ここに関しては歩き遍路の方が楽です。でも、登り坂があるなら下り坂もあるわけですし、高知の行程のほとんどを占めるのは平地。平坦な場所で距離を稼げるのが自転車の強みですね。
地場産品販売センター『輝るぽーと安田』で、とりあえず晩ごはんを物色。
テナントの魚輝という鮮魚直売所で、おっちゃんたちがたむろしていましたので、泊まれる場所の情報を収集。ふむふむ、どうやら神峯寺の手前に、土佐くろしお鉄道の唐浜駅があるらしい。「泊まっている人は見たことがないけど、別に何も言われないと思う」とのこと。さらに、なんらかの刺身をパックしてくれました。魚の名前聞いたのですが失念。
お接待というより、人情でくれたという方が感覚的に近い。醤油まで…、泣ける。
唐浜駅に向けて出発。いい感じに暮れてきました。
台風直撃したし、山の上の寺には辟易してるけど、道筋の人々に元気をもらってなんとかやれてます。
頭の垂れはじめた稲穂を横目に進みます。唐浜駅に着くころにはすっかり陽が落ちていました。
駅前はターミナルになっていて、トイレや待合室が併設されています。唐浜駅のキャラがいますよ。
これまでのテイストとは違い、キャラの名前は『とうのはま へんろ君』。何だか不思議なめぐり逢わせですね。
駅には1時間に3本ほど電車が停まって、そのたびに乗客が数人降りてきます。その間隙を縫うように、パパっとテントを設営します。
待合室で晩ごはん。刺身がめちゃくちゃウマかった。たぶん、ハマチとかカンパチとかの有名どころだと思います。さて、明日の予定を立てましょう。
今日気付いたことですが、Googleマップを頼りにしていると予定時刻に着かないこともあります。その原因の一つが、『標高を読みづらい』こと。道順と距離は事前にわかるのですが、行ってみるとかなりの山の上だったなんてことが。まさに今日の金剛頂寺がそうでした。坂に対して「登らせすぎだろ!」と、何度怒りをぶつけたことか。
明日は神峯寺、大日寺、国分寺、善楽寺、竹林寺、禅師峰寺、雪蹊寺と、高知市内まで行ければと思います。ですが、予定通り回れないということもあるので、現段階で宿の予約はしていません。宿に泊まれなければ、野宿という選択肢もありますが、風呂・洗濯・充電のことを考えれば、2日連続の野宿は避けたいところです…。