鍋割山に登るなら鍋割山荘に泊まったほうがいい
かねてから行きたいと思っていた鍋割山【なべわりやま:標高1,272m】に登ってきました。山頂の鍋割山荘では山小屋メシとして“鍋焼うどん”を提供していて、これを目指して鍋割山に登る人も多いようです。今回はその鍋割山荘に宿泊して、ともに表丹沢の一角をなす塔ノ岳にも足を伸ばしています。『ボッカの鉄人』にも会ってきました!
重要!
小屋主の草野さんのお体の状態がよろしくないようで、2019年4月より宿泊サービスを停止されております。それに伴い営業時間も変更されてますので、以下の鍋割山荘のサイトをご確認ください。
※登山時期:2016年4月~5月
今回は新宿駅からスタートします。小田急小田原線で渋沢駅まで行き、駅前からバスに乗って登山口の停留所まで向かいます。
※鍋割山荘のレポートにジャンプするにはこちらをクリック
主要登山口である『大倉』には駐車場があります。車で行けるのであれば、電車が動き出す前から登山を開始できるので混雑を回避できます。
タイトルにあるように、なぜ鍋割山荘に泊まった方がいいのかということですが、僕自身が“山小屋の雰囲気が好き”というのがひとつの理由です。(この小屋がまた良かったのですが、それはのちほど)
もう一つの理由として、一泊することで時間に余裕ができ、結果的に混雑を回避できます。
先ほどから「回避回避」と言ってきましたが、とても人気のある山なので休日は混み合います。
3日ほど前に、宿泊予約のために、山荘の公式HPにある固定回線に電話を入れました。留守電になったのでメッセージを残しておきましたが、返信がありませんでした。なので、携帯番号にかけて宿泊予約をしました。その際、「15時までには着くように来てください。雨などでキャンセルする際は連絡ください。」などの留意点をいくつか確認しました。
さて、渋沢駅北口のバスのりばに着きました。バスの時刻表上は6:48が始発ですが、その前の便もあります。というのも、状況によって臨時バスも出ているようなのです。
日帰り登山を予定していると、どうしても朝一で大倉から出発したいところ。みんな同じことを思っているため、朝のバスは混みます。
15分ほどで大倉に到着します。
大倉、標高290mです。
こちらのどんぐりハウスで、まず準備を整えましょう。
隣には、神奈川県立秦野戸川公園の大倉駐車場があります。開場時間は8:00~21:00です。日帰り登山なら大いに使える駐車場です。8時よりも前、早朝に登り始めたい人には、道路を挟んだ向かい側に24時間やってる駐車場があります。
しかも、平日は最大で500円、土日祝日は最大で800円の安さ。いや、県立の方が高いと言うべきでしょうか。
秦野戸川公園パークセンター
三ノ塔(1,205.2 m)へ行くときは、この風の吊り橋を渡ります。登山届を出して出発しましょう。
さて、僕は今日はこんなルートで登ってみようと思います。大倉から西山林道を通って二俣へ。鍋割山からは鍋割山稜に沿って塔ノ岳への縦走。そこから金冷シまで引き返して、大倉尾根を下ります。
登山開始~大倉から二俣
さっそく最初の立て札が。
右は塔ノ岳、左は鍋割山。上で縦走できます。
たまに住民とすれ違います。生活域と登山道がかぶっていると大変そう。
たまに出くわす無人販売所。キャベツ2個で100円は安いので、買って登ろうかなと思いました。
オンロードはここまで。
民家の脇のオフロードを通ります。
だからすぐそこが鹿の生息域だったりするんですよ。
立て札が要所ようしょにあるので、日中なら迷うことはないと思います。
あと7.0kmの文字。緩やかな傾斜の登山道を進んでいます。
丹沢といえば水源。何年か前に、サントリー・モルツの使用水であることを売り文句にしてましたもんね。
送電線の鉄塔。ということは水力発電でしょうか。
ここは西山林道らしいです。
西山林道を外れる形ですが、黒竜の滝へ寄り道します。時間に余裕があるので行ってみましょう。
階段の途中でゾウムシを発見しました。
東屋もありますが、人が使った形跡が見受けられません。
こういうあまり人が行かなそうなところにも立て札があって、道も整備されています。こころなしか立て札が苔むしています。
黒竜の滝。まー滝っちゃ滝だよなぁ、という感じです。
滝まで下りてくるだけで、びっくりするほど人の気配がなくなりました。いったん引き返します。
この先に進めば、さらに四十八瀬川、芝生の広場へとつながるようです。
最終的には鍋割山にも通じているみたいです。しかし、アブラチャンの森とか笹地の森とか、深そうな森だなあ。
黒竜の滝への往復は20分ぐらいだったかと思います。
黒竜の滝分岐から少し歩くと、向かいに通行止め、後ろ側にも通行止め、みたいな場所に出ます。
必然的に看板の指し示す右上の方へ歩を進めます。
ただ、雨など降ってなかったはずなのに、道の上からさらさらと水が流れてきてます。ちょっとした川、さすが水源。
山道に突然、銅像が見えてきました。
山道の脇に少し広場っぽくなっていまして、奥の方に銅像が鎮座ましましています。
山の恩人・尾関広氏の像とのこと。誰だよ、恩人にメガネかけたの。
距離でいえば半分ぐらいは来ているはずですが、一向に登っている感じがしません。大倉から鍋割山頂まで1,000mはあるはずなのに。
二俣から鍋割山頂
二俣に到着。ヤマビルに注意。
ちっちゃな橋を渡ります。
V字に切り返す形で、小丸を経由したルートへの分岐がありますが、もちろん無視して、直で鍋割山頂を目指します。
ペットボトルが山と置かれた地点に到着。この脇には、車が数台停まっています。車はここまで来ることができます。いよいよこれより登山本番です。
『水が入ったこのペットボトルを担ぎ上げて、山小屋に届けてほしい』。そんな旨が書かれております。そう、鍋割山名物の“ボッカのボランティア”です。せっかくですから、僕も力の限り担ぎ上げます!
ザックに入るだけ持っていきたいと思います。ここの立て札によると、あと2.4kmぽっちなので大丈夫でしょう。計3本、8リットル弱を持って行きます!
大五郎サイズをバッグに詰め込む時に、さすがに一瞬ためらいました。しかし、100kgの荷物をあげるボッカさんもいると聞きます。これしきで音を上げるわけにはいかないですよね。張り合ったところで足元にも及びませんが、担ぎ上げたときには達成感が待っていることでしょう。
ここからは途端に険しくなります。石がゴロゴロと重なる箇所を登るんですが、この道の上から水がジャバジャバ流れて、僕の行く手を阻んできます。風雲たけし城かっての。
100m進んだところで、さっそく肩に食い込んでくるザックにびっくりしました。
こんな道を重荷を背負って登る自信がない方は、ペットボトルを持っていく必要はありません。あそこで僕が見ていた感じでは、持って行かない人の方が全然多いです。
フラフラしながら登ると危険ですからね。
後沢乗越(読み方:うしろざわのっこし)まで来ました。黒竜の滝を進んでいくと、栗ノ木洞を経由してここで合流できるみたいです。
登山の準備の時って、水分をどれだけ持って行くか悩みますよね。なるべくたくさん多くザックに詰めたいけど、重すぎると疲れるし。ザックを軽くしたいけど、水が途中で尽きると後悔しそうだし。
その中で最大公約数を探っていくわけですが、これはボランティアなので見返りがありません。
ま、人生というのも苦しみという重荷を背負って登り続ける山道ですからね。せめて自分の中でイベント化して、楽しく運びたいものです。
草むらからトカゲが現れました。
ニホントカゲかと思われます。
<鍋割山稜10>の立て札が出たら、ラストスパートです。(頂上は<鍋割山稜11>)
10段登ってひと休み。ひと休みしてまた10段。
人工物が見えてきました。鍋割山荘の太陽光発電設備です
鍋割山頂 散策
ついに山頂到着!
鍋割山荘。鍋焼うどんののぼりがはためいていますね。
ここでペットボトルを、用意されているポリタンクに移し替えてボッカ終了です!小屋のスタッフの方が、「ありがとうございます。重かったでしょう。」とねぎらってくれました。正直、最悪の場合、水なんだから途中で捨ててもいいかと思っていましたが、自己完結できてよかったです。
そうこうしていると、後続の人々がどんどん上がって来ます。
天気が良ければ富士山が望めます。みんな特等席に陣取ってうどんを食べています。
5月なので雪が残っているかな。
これが鍋割山の三角点です。ロープで囲まれたエリアにありました。
ミリンダグレープの空き缶。落ちているごみでさえ、時代を感じますね。元の場所にそっと戻しました。
トイレはチップ制です。100円を用意しましょう。
鍋焼うどんの注文で小屋の中は大混雑。落ち着いた頃合を見て、宿泊手続きをしてもらいます。
料金は1泊2食付で6,500円。今日の宿泊者は僕を入れて4人とのこと。意外と少ない。小屋主の草野さんに、就寝場所を案内をしてもらいます。
奥様から許可をいただいてのアップです。
いわゆる屋根裏のような場所です。ザックを先に上げて、はしごを上がります。
この秘密基地にいるようなワクワク感も、山小屋の醍醐味のひとつ。
上は上でまた別の空間といった感じです。毛布や布団が方々に置かれています。ドアなど遮るものはないのですが、なんたって今日は客が少ないですからね。人目が気になることもないでしょう。
さて、荷物を置いたら小屋内を探索しましょう。
夕食に鍋焼うどんは出ないそうなので、せっかくなので僕も注文してみました。夕食までまだ時間もありますし。
鍋割山名物 鍋焼うどん(1,000円)。疲れた体に、この甘めのダシが染み渡りますね。この具材を毎日休まず運び続けているのだそうです。山小屋相場だと、2,000円近くしてもおかしくないと思います。
寒くなってきたので、小屋内に持ち込んで食べることに。
草野さんが下山するタイミングで、写真を撮らせていただきました。
毎日のボッカは9,500回を超え、来年には10,000回を迎える予定だそうです!「死ななければの予定だけど。」と笑っていました。衣笠も真っ青の鉄人ぶりですね。明日もまた、箱いっぱいの食材を積んで登ります。
注文の仕方の貼り紙は、常連客が書いてくれたんだそうです。
Ovationはじめ、数本のギターが無造作に置かれていました。
書棚は山に関する本がほとんど。
小屋内を撮影しているとあっという間に時間が過ぎて、17時前には夕食となりました。熱した石か豆炭か、こたつの中に入れてくれました。春とはいえ山頂はまだまだ寒いので、この温みがとてもうれしい。
草野さんの奥様(女将さんと言うべきでしょうか)と、スタッフの方と、宿泊客4人で食卓を囲みます。
あの小屋はどうだとか、そういう話で会話は弾みます。スタッフの方も旅慣れているので、おすすめの山とかも教えてくれますよ。
印象に残った女将さんの言葉。「あのね○○ちゃん、息が切れたときは、空気を吸うんじゃなくてまず吐くの。悪いの出し切ったら、自然と新しい空気が入ってくるから。」案外、深いかもしれないなと思いました。
夕食を食べ終わった後もずっと話し続けて、時刻は消灯の21時を迎えました。実に楽しい時間でした。
明日は6時に朝食の予定です。
はじめまして。草野さんの奥さまはお泊りになられているのですね。
奥さまとは随分前にお話をさせていただいたことはあるのですが、お元気そうでなによりでした。
僕も一度は泊まってみたいのですがなかなか機会がなくて…。