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ゴローの登山靴『S-8』を買った話
登山靴の世界には、市販されていないが”その道”では有名なメーカーがあります。巣鴨にある、セミオーダー登山靴の『ゴロー』さんです。有名登山家にも愛用者が多いらしく、「いつかは僕も…」と憧れの気持ちを持っていましたが、数年経ってもその熱が引いてくれなかったので、ここらで”その道”に足を踏み入れてみることにしました。
登山靴のオーダーメイド…!僕がその言葉に強く惹きつけられるのには、大きく2つの理由があります。まずひとつは、僕の足が幅広だからということ。
実はこれまでどんな靴を履いても、足の前方部分が締め付けられてしまっていました。そのため、市販の靴を買う際には甲幅に合わせた大きめのものを買って、先っぽにできる空間はやむなしとすることが当たり前のようになっています。外反母趾とまではいかないですが、窮屈感にそれなりに悩まされてきました。
ところが、登山靴選びにおいては、それでは問題が発生します。というのも、靴の中で足が遊ぶのは、長い山行では余計な疲れとして蓄積されてしまうからです。ゆえに窮屈感と疲労感のはざまで折り合いをつけた靴を使用してきました。
僕は思うのです。自分の足にフィットする登山靴なら、どんなに楽しいだろうと。
もうひとつには、これから多くの山を共にできるような相棒になる靴が欲しかったということ。いうなれば、山道具を大事に使う人間になるきっかけにしたいと思ったのです。愛着が造詣につながっていくことも期待して。
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僕がゴローを訪れたのは、2月の寒い時期でした。閉店前の時間。事前にゴローのサイトで目を付けていた『S-8』というモデルをはじめ、店内にはいろんな種類の靴が並んでいました。僕は早々に、自分に合った登山靴が欲しいと店員さんに言いました。対応してくれたのは、ご主人の森本さんでした。
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森本さんが僕に聞いたことはたった2つ。
『重い荷物を背負うか』『冬山に登るか』
う~ん、どちらもしない。僕は少し心に引っかかりながらも、どちらの問いにも「いいえ」と答えました。すると、森本さんは「じゃあ、ブーティエルだな。」と言いました。
ブーティエルは、S-8よりも底が柔らかく馴染みやすい靴とのことです。
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厚手の登山用靴下を貸してもらい、手渡されたブーティエルを試し履きしました。その場で歩き回ってみたのですが、非常にフィット感がありました。森本さん的には、僕が登山ライフを楽しめるものをすすめてくれたのでしょう。
正直なところ僕は、登山というものは好きですがそこまで明るくないです。でも、もっとディープに登山と付き合って行きたいと考えています。そこで、「重い荷物を背負う登山もしたいし、冬山登山もしていきたい」という旨を伝えました。
お客さんの中には、オーバースペックを求める方がたくさんいることでしょう。僕に対してもそう思われたかもしれませんが、森本さんは「じゃあ、S-8履いてみる?」と気さくに応じてくれました。
S-8を手にしたところ、なるほどゴツい。手で持ってみた印象も、ズッシリと重たい。しかしながら履いてみたら、ブーティエルとさほど変わらずといった感じでした。まぁ、長距離のトレイルでどういう差になってくるのかは気になるところですが、僕の心はここで決まったのでした。
「S-8でお願いします。」
このとき、足の幅が人より広めであることも打ち明けました。じゃあ測ってみようということで、足の測定が始まりました。
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専用のオーダーシートですね。
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森本さんいわく、僕の足は「そこまで幅広じゃない」らしい。いわゆる『一般的な足』に近いようで、オーダーしなくても、店頭にあるものでも間に合うようです。
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そうなってしまうと、今まで感じてきた『窮屈感』はどういうことなのか。
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何より、店頭にあるもので間に合うことになります。森本さんは僕がオーダーにこだわってることを見抜いたのか、最終的にはこの足型から作っていただけることで落ち着きましたが、ひやひやしたのでした。
オーダーになると金額に¥3,240-が加わるため、いったん店頭のものをすすめてくださったのかもしれませんね。決められた選択肢の中から選んでいくので、正確には『セミオーダー』ということになります。受注生産。
価格はインソール代、オーダー代なども含めて、合計¥45,900-。登山靴のオーダーが一般的ではないため、相場としてこれが高いのか安いのかはわかりません。ただ、簡単な手直しや調整にかかる料金は無料。これから長く付き合うことを考えると、安いのかもしれません。
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いろいろ書いてあります。『バルペル』とはイタリアの会社の名前だそうです。S-8だけバルペル社の革を使ってるとのこと。
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出来上がり予定日は、3か月後の5月19日とのこと。「夏山には間に合うかな。」と森本さん。「合わない靴履いてたら、靴じゃなくて苦痛になっちゃうよ」とジョークを飛ばすおちゃめな一面も。
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長く常連の85歳の女性が、最近3足目を買って行ったというエピソードも聞かせてもらいました。たまに海外からも買いに来る方がいるようです。
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撮影も許可していただきました。これが『ブーティエル』。
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黒いのは、スーツに合わせやすい『プレーントゥ』。
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茶色いのが、『プレーントゥr』。何かしら違いがあるのだろう。
出来上がり予定日より10日ほど前となったある日、ゴローを訪れてみました。理由は、ワクワクし過ぎて何かお手入れ用品でも買っておこうかなと思ったから。
すると、仕上がったものがちょうど店に届いていました。(製作自体は東十条にある工房でされているとのこと)
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「履いてみてください」とスタッフの女性。
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履き心地は問題なし。というのも、長時間履かないとわからないですからね。とりあえず悪くはないので、さっそく持ち帰ることにしました。
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なお、ゴロー特製の防水ワックスとマーブル総業製のブラシも購入しました。
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防水ワックス¥972-。ブラシ¥1,242-。
S-8との付き合いは、まずは防水ワックスをかけるところから始まる。その模様は、また次の記事で紹介することにします。
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ゴロー
店名 | ゴロー |
住所 | 〒〒113-0021 東京都文京区本駒込6丁目4−2 |
URL | http://www.goro.co.jp/ |