北海道限定の百人一首をティッシュでする
2018/05/02
僕のふるさと北海道には独自の道を歩んだ百人一首があります。僕が大好きなその北海道の百人一首を、何かと融合させてダジャレの力で全国に広めたい。
何とコラボしようか考えながら声に出して反復した時、その答えは出ました。
「百人一首、百人一首、百人一首、百人ティッシュ!」
助走も無くトップスピードでゴールした感はありますが、これはもう神が降りてきたって事でしょう。
年を取ると郷土愛が強くなるし、ダジャレを言いたくなる。これ本当ですわ。
冷静になると語感が似てるからってティッシュと融合させなくてもいいんじゃないかとふとよぎってしまうのも事実。ダジャレで強引にひとつの記事を完成させようとすると周りが見えなくなってしまうもの。油断すると耳とミニをかけても面白いのではないんだろうかと思ってしまうので気を付けなきゃ。
でも、ティッシュという言葉自身すでに面白い。ティシューと記述されていたり、人によってはテッシュと呼ぶ。修学旅行先の旅館で見たバカな友人の「テッシュ取って~」と懇願するバカな顔を今でも忘れません。とにかくティッシュのポテンシャルを信じて計画を進めていく事にしたのです。
そろそろ中身はよとツッコまれそうなので御託はこのくらいにして、今回はもう後ろを振り返らず着想時の興奮のまま書き綴りたい。
百人ティッシュ!(ズームイン的なノリで)
■道産子の百人一首といえばコレ
我が一族の間で使われている、年季の入った百人一首があります。祝い事なんかで集まった時に誰かがなんとなくひっぱり出してきて、老若入り乱れて札を取り合ったものです。
今現在いとこの家にあったので、このために送ってもらいました。
ドーン!
『全日本下の句歌留多(かるた)協会指定』のお墨付き。下の句かるたとは何かというのは後述します。
まず一番伝えたいのは取り札の筆文字の素晴らしさ。流麗な字体がインパクト大ですよね。そして、それが木の札に書き込まれているのが北海道の百人一首の特徴です。
そういえば送って欲しいといとこに頼んだ時、「一枚ないみたい」と言っていたけどホントだ、ひと山だけ一枚分欠けているね。何の札が無いのか気になるとこでありますが、とりあえず全部出してみましょう。
これこれ、ドミノだったあの頃が懐かしい。乱雑な扱いを受け続けて今なお現役。ホオノキという木材で作られてるみたいです。
見よ、額に貼れば妖怪もフリーズしそうなこの迫力を!
左が取り札です。下の句(『五・七・五・七・七』の『七・七』の部分)が書かれています。普通の百人一首の取り札はひらがなのみで書かれているのに対して、崩し字で漢字もバンバン使っています。
右が読み札です。読み手が詠み上げるのは下の句だけなんです。普通は頭から詠み上げますよね。
僕は下の句かるたのルールで育ってきており、詠まれたものをそのまま取ればいいと思っていたので、上京して上の句と下の句を両方覚えないと相手に勝てないと聞いたときはびっくりしましたね。内地レベルたけー!と思った瞬間でした。
乙女のやつ、いとこの姉ちゃん好きだったよなー。『乙女の』以降のごにょごにょしている文字、崩しすぎて読めないですね。
これにいたってはでっかい文字も読みづらい。調べてみると、『流れも』を『流連も』と表記しているようです。これは変体仮名を使っているのです。『れ』という文字は現在『礼』が崩れていったものを「re」と発音しています。『連』が崩れたこの文字も「re」と発音されていたのですが、明治になって「re」は『れ』という文字を使う!と決められてしまい今に至るというのです。
その時のちょっとした決断で光と影の様な今があるなんてかわいそう、変体仮名にもっと日の目を見てほしいと思った人はもう少しお付き合いください。
有名なところでは、老舗そば屋の『かんだやぶそば』にも変体仮名が。
『ぶ』が『婦にてんてん』の変体仮名が使われています。街のいたるところに変体はいるのです。
そして全部並べ終わった時に足りない札が判明したのです!
なんと、『あらざらむ この世の外の 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな(和泉式部)』だったのです。ハイハイ、あら今ね。
死ぬ前にもう一度だけ会いたいなあ、というような訳になるのですが、この札今どこに行っちゃったんでしょうかね、僕も会いたいです。
あとコレ、『なりけり』で締められていますが『なりける』の間違いでしょうね。ぞ・なむ・や・か・こその時は形が変化するはずですもんね、係り結びって。大人になって改めて見てみると発見があって楽しい。
78年室井商店と書いてます。僕が生まれる前から売られていたものです。
著作権というワードを見てしまったので気になりました。これからやろうとしている事が室井商店さんの権利を侵してしまうのかどうか。僕は一度も訴えられずに人生を終えたいと思っているので、ここは一応室井商店さんに確認しておきました。
ビジネス目的じゃなければブログに載せても何してもいいですよと許可を頂きました。室井商店さんは会津の会社なんですが、ほぼ北海道からしか注文がないそうです。会津の人々によって北海道の開拓時代に広まったと言われていて、逆に会津では衰退していったとか。
なるほど、『八重の桜』で北海道の百人一首が出てる!とびっくりしたんですが、もともとは会津発祥だったんですね。
百人ティッシュ!(DAIGOのポーズで)
■素材を求めて出かけよう
百人一首とティッシュの融合。こう聞いたら人はどんな完成形を想像するのでしょう。ティッシュペーパーに文字を書いたものでしょうか。はたまたティッシュについての句を100首詠むイベントでしょうか。
やっぱりこの筆文字は前面に押し出していきたいですし、遊戯性は残したい。となるとおのずと、木の札をポケットティッシュに替えようというのは万人の意見が一致するところだと思います。
この時からポケットティッシュを100個集める長い旅が始まりました。そう、街に出ればタダで入手可能なのが素材対象としては良いですね。
秋葉原のケータイショップの前でもらった第一ティッシュ。幸先のいいスタート。
100首それぞれに歌人が想いを込めたのだから、僕もそれに応えて100種類集めたいと思います。妥協はしたくありません、歌人のみんなに悪いから。
ポケットティッシュの配布があると聞けば、役所にだってどこにだって参ります。
こんな時ツイッター検索が便利です。『ポケットティッシュ』についての言及が極上の情報源なんです。
・○○の前で□□のポケットティッシュもらったー
・今日花粉やばい。午前中でポケットティッシュ3つ消費した
・命綱のポケットティッシュが底をついた時の絶望感
・ポケットティッシュを買うとなんか負けた気がする
ポケットティッシュって欲しがっている人結構いるんだと気付かされましたね。
献血にも協力させていただきました。互助の精神だとか尊い理由はありません。ただティッシュが欲しかったからです。
ここ新宿東南口にはティッシュアゴラと呼びたいほど、ポケットティッシュの集まる広場があります。でもほぼ女性向け広告のティッシュのため、配っている人の眼中に男性はいません。
早くノルマを終えたいなら誰にでも配ってしまえと思うところですが、その一線は越えません。ティッシュ配り文化が日本で発展しているのは、日本人の真面目な性質のおかげでもあるのです。(たぶん)
ポケットティッシュが欲しい時に手に入らないという事を経験した方もいるのではないでしょうか。僕も、これ100種類も集まんのかなと弱気になりました。そんな時、郵便ポストに贈り物が入っていました。
停滞期がありながらもたまにあるこういうごほうびの様なプレゼントに、そのまま続けなさいと背中を押されている気がします。
■文字を抽出する
ティッシュ配布情報にはアンテナを張っておくとして、その間にできる作業をしましょう。ポケットティッシュを百人一首の札にした事がある人はわかると思いますが、縦と横の比率が大体同じなんです。なので、木札の文字だけ抽出してポケットティッシュに貼り付ければティッシュ札は完成します。
まず、木札をスキャンします。歴史的文献をデジタル化してるような高尚な気分を味わうことができますよ。
それをPCに送って、
画像系フリーソフトで文字部分だけを抽出していきます。
自動選択ツールを利用すると楽でしょう。
『龍田の川の錦なりけり』
ひとクリックで全文字選択できるのは、後にも先にもこの一首だけでした。この世界一不毛なライフハックを生かせる状況をいつか見つけたい。
文字を抜き取った跡。違う色を入れたらカラフル百人一首が出来そう。
文字だけの画像を透明なシールに印刷します。
このラベルシートを使います。透明なのを使う理由、それは紙シールだと何に貼っているのかわからなくなるから。
いい感じに仕上がりました。これを切り分けておきましょう。
さて、ポケットティッシュ集めにも熱が入ります。
グリーンジャンボ宝くじの販売所で。
―1枚だけ買ってもティッシュいただけますか?
販売員「花粉症なんでしょ、買わないでもあげるよ。」
―ありがとうございます!
花粉症とは無縁ですが花粉の季節に乗じて頂戴しました。ついてもいい嘘があるとしたら、これもその類でしょう。花粉症ではないけど百人一首をするためにポケットティッシュを集めてまして…と言ったら不審がるだろうと僕でも察しがつきますから。今まで受け取って礼を言われてきましたが、はじめてこちらから礼を言いました。
販売員のおばちゃんのやさしさを感じたのも束の間、自転車のカゴに使用済みティッシュが入れられていました。
ティッシュハラスメントか?
駅のイベントスペースの抽選会にも積極的に参加。
なぜなら4等になんと!
ティッシュがあるからです!
1000円分の買い物をしてレシートを提示、引いたくじは…!
3等!!!
あーー!マジだー、何やってんだ俺!!
「ティッシュ欲しかったんならどうぞどうぞ」
―え!?ありがとうございます!
撮影にお付き合いいただき助かります。熱いのはお湯だけじゃないぜ、岳(だけ)温泉!(←キャッチフレーズ使っていいですよ)
ティッシュ集めも佳境に入ってきた頃、昔のバイト仲間とわかさぎ釣り旅行に行く話で盛り上がりました。これは百人ティッシュを試すいい機会です。
帳尻を合わせるために購入した(負けた?)新幹線のティッシュ。表には新幹線、裏にはそのデータが載っていて使うのがもったいない気がします。
そんなこんなで100種類集めることができました。フフ、仲間からどんな反応があるのか楽しみですね。むしろ、ここからがメイン。
■さぁ、百人ティッシュの夕べ
所要があったので僕だけが旅館合流だったのですが、こいつらもうでき上がってる!
「新しいカルタを試してほしい」と事前に言ってはおいたんですが果たして…
シールを貼るという地味な作業が残っていたので、一緒に仕上げてもらうことに。
ぺりぺり
ぺたっ
どっち側に貼るか最後まで悩んだんですが、ポケットティッシュのバラエティーに富んだビジュアルを活かすため広告側にしました。
一同「(なんなんだこれは…)」
並べてみます。
うーん、ひとつわかること。それは、百人ティッシュは百人一首に比べて目に鮮やか。
100枚全てを並べています。
判別しやすいのもあれば、
判別しにくいのもある。始める前に何て書いてあるのか確認しておかないと札は取れないのです。(百人ティッシュあるある)
百人一首をほぼ知らない彼らにルール説明をする動画をご覧ください。
本来、上の句詠まれた時点で取り合いになるのですが、下の句を聴いてから取れば良いと説明してます。
一般的なルールで北海道の百人一首をしていると考えてください。
この場じゃなかったか!グダグダとはこういうことだ。
初見かつ酩酊状態なので反応が鈍い。ひとり寝てるし。
僕の求めていたみやびはここにはありませんでした。
しかし、カチャカチャと心地良い木の音が、ポフポフとまぬけな音に変わったのはそれはそれで楽しかった。
そして夜が明けた…
百人ディッシュだ!(のり)
「なにこれ―!」
こんだけやれば彼らには浸透したでしょう。
『わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人の釣り舟(参議篁)』
(冬の風物詩である)わかさぎは魚の中では小さいけれども、いざ釣れるとやはり楽しいものだなあ。(現代語訳風)
ひらがなのみの一般的な取り札より、この筆文字の取り札がデフォルトでもいいかなと、少し思った光のどけき春の日でした。
そうそう、失くした木札を手作りしていとこに送り返したらえらく喜んでくれました。
少しにじんだけど。
コメント
子供が百人一首を学校でやっていると聞いてどのメーカーのか調べててお邪魔しました。
私が子供の頃やってたのはこの木札だったので、百人一首ってコレでしょ?といったら違うよー!といわれ衝撃的でした。(引っ越して九州だったため)北海道独自の札だったんですね、目から鱗でした・・。
百人ティッシュカラフルで楽しそうですね、制作お疲れ様でした^-^
2019年12月20日 8:11 AM | 通りすがり